シャーロック・ホームズ
主にジェレミー・ブレット主演のグラナダ版ドラマを踏まえてコメントしています。
ただし、トリックや資料的な話はほぼゼロの、ひまつぶしトークです。


 
『緋色の研究』
ホームズ&ワトソンが初めて出会い、下宿をシェアしはじめるエピソード。ホームズの自画自賛と、周囲をバカ扱いするシーンは強烈。しかし、複雑な事件を端的に読み解いてし まう手法は筋が通りまくっている。犯人の犯行動機の背景がドラマチックに描かれ、殺人にいたる執念がよく伝わってくる。
ホームズもの でこんなに「犯人」に重点が置かれている作品は、他には、「ボール箱」くらいかな。
*ホームズの世界を現代に移したBBCのドラマもあってますが、毒薬を作ってそっくりの無害なほうと選ばせるというやり方は、殺しを弄ぶようでむしろ現代的 に見えるし、ワトソンがアフガン帰りでトラウマを負ってるとう設定は、もろに現代に合うのも皮肉。

『美しき自転車乗り』
変なヒゲ男にストーカーされている美人教師。ワトソンが調査に出かけるが、その結果を見てホームズ は散々にけなす。ヒゲ男の追跡が、不気味というよりは思い切りマヌケに見える。田園風景もちっとも危険そうに見えな い。にもかかわらず、事件そもものは大変凶悪。にしても、当時の自転車は本当に乗るだけで、バネがなさそうだし、スタンドもついていない(イギリ スではスタンドはいまだについていないかも)


『まだらの紐』
インド帰りの医者と、その義理の娘たちのトラブル。この凶悪な義父は、娘が結婚するときに財産を持 っていかれると嫌なので、小細工を使って殺したのである。
妹は、可哀想な姉の言い残した「まだらの紐」が何なのか見当もつかないが、屋敷ではインドの動物をペットにし、姉妹もインドで育ったのであれば、それがヘビであることくらい分かりそうなもの。
ホームズものには、父親が娘の名義の財産を奪おうとして、荒っぽい手段をとる話がいくつかあるけど 、これが最悪の義父だと思う。
そんな家に張り込みして現場の寝室にいるというのに、ホームズの脇で眠りこけるワトソンは本当に無防備。


『赤毛連盟』
赤毛の立派な質屋が、おかしな仕事にでかけている間に、留守番の男が銀行までトンネルを掘っている 、という面白い事件。質屋がだまされたと気づいてベーカー街に駆け込むと、話を聞いてホームズもワ トソンも大笑い。
銀行家は素人と称してはじめはホームズを見下しているのが、事件が解決するとへこへこ。ホームズも いつもの不遜な態度で「経費」を請求する。質屋に壊された品物の弁償代を渡しつつ、「給料はまとも に払うんですな」とワトソンに言わせるあたりにニヤリ。


『ボヘミアの醜聞』
非常にバレバレの変装でホームズを訪ねた、ボヘミアの貴族。あの狭い客間兼リビングでおおいに威張り、昔付き合った女から写真を取り返せという。ホームズは変装して(これが物凄く上手い)その女性アイリーンに近づくが、その女性は全く潔癖で勇敢で聡明な美人だった。
写真のありかを見つけるためとはいえ、ホームズが牧師の変装でウソの火事を 起こすところなどは、アイリーンのほうが可哀想でならない。最後に、宝石をやろうというのを断って、握手しようとする手も無視して立ち去るという、あからさま な嫌い方をするホームズ。かわりにワトソンがにこやかに握手するので、この場は収まるんだな(笑)


『ノーウッドの建築業者』
母の知り合いと名乗る建築業者に、内緒で財産を譲ると言われた青年。翌日にはその老人を殺したことにされて逮捕されるが、彼には身に覚えがない。ホームレスの暗号も読めるホームズは、お仲間に変装 して、いるはずの男が消えたことをつきとめる。
犯行は執念深くて陰湿。ホームズの観察眼と推理が冴え冴えとして、悪党を引っ張り出すシーンが小気味いい。




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ストーリー編の続きはまたね。

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